【コラム】そもそもDXとは[DXの歩き方コラム第1部(全3部)DSolマーケティンググループ監修]
- 2021/2/1

はじめに
あらゆる業種業界の企業がいま、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に向けた施策を進めている。日本では経産省が「DX推進ガイドライン」を策定するなど、国を挙げての取り組みも始まった。第1部ではDXの定義や求められる理由について考える。
DXの定義を知る
ここ数年、ビジネスの現場で注目を集めているのが「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉だ。「企業が生き残るにはDXの取り組みが不可欠」とも言われ、すでに多くの企業がDXを推進している。その一方で、DXの取り組みをどのように進めればよいのかわからないと悩む企業も少なくない。
DXという言葉が生まれたのは、2004年のことだと言われている。もともとスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したもので、「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念を表している。その後、2016年に米国調査会社のIDCがDXという言葉に注目し、以下のように定義した。
「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」
※経済産業省「DXレポートより引用」https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_03.pdf
DXが日本国内で知られるようになったのは、2018年9月に経済産業省が「DXレポート」を公開したのがきっかけだ。このレポートにより、DXという言葉は「企業が自社のビジネス課題を解決するために、最新デジタル技術による変革を推進すること」という狭義の意味で用いられることが多くなっている。

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei//linkdata/h30_01_houkoku.pdf
ビジネスの変革にDXが必須な理由
なぜ企業はDXに取り組み必要があるのだろうか。一つは「変化する市場への柔軟な対応」が求められているからだ。企業を取り巻くビジネス環境は社会の要求によって変化し続けており、多くの企業はその変化に即応すべくDXを推進している。その波に乗れなければ、変化への対応が難しく熾烈な競争の敗者となるおそれもあるのだ。
二つ目の理由は「新たなビジネス領域への参入」が必要だからだ。現在の市場において確固たる地位にある企業であっても、その市場が未来永劫続いていくとは限らない。既存のビジネスモデルがいつまでも通用するわけでなく、企業が生き残るには場合によってコアビジネスから脱却しなければならないこともある。そうした不確実な未来に備え、デジタル技術を駆使しながら新しいビジネス領域を開拓しなければならないわけだ。
もう一つは「既存のITシステム(レガシーシステム)の老朽化」という理由だ。既存システムは変化する状況に合わせて更新すればするほど複雑になっていく。そのため運用保守にかかる費用が増大化し、新たなビジネスに必要なITシステムへの新規投資が難しくなる。その状態がさらに進むとITシステムは次第にブラックボックス化し、気づいたときには重要な自社のデータ資産を失うことにもなりかねない。一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会の調査によると、約8割の企業がレガシーシステムを抱え、その約7割が「レガシーシステムがDXの足かせになっている」と回答している。

http://www.juas.or.jp/cms/media/2017/03/digitalization2017.pdf
こうした現状から抜け出すためにも、クラウドなどのテクノロジーを積極的に取り入れ、老朽化したレガシーシステムをいち早く刷新することが必須なのである。その取り組みのなかで、オンプレミスとクラウドを組み合わせたハイブリッド型のITインフラ環境を検討する企業も少なくないが、さらなる持続可能性を追求する意味合いから、クラウドに全面移行する「フルクラウド化」も選択肢に入れるべきだと言えよう。
DX推進ガイドラインが指し示すDXの方向性とは
では、具体的どのようにしてDXを推進していけばよいのだろうか。そうした悩みに直面する企業の道しるべとして、経済産業省が2018年12月に発表したのが「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」だ。
DX推進ガイドラインは、DXの実現やその基盤となるITシステムの構築を行っていくうえで企業が押さえるべき事項を明確にするとともに、企業のステークホルダーがDXの取り組みを評価するために活用できることを目的に取りまとめられた。ただしガイドラインが指すDXは、上述した理由の3番目の「既存のITシステム(レガシーシステム)の老朽化」対策に主眼が置かれている。これはつまり、企業の経営戦略としてDXを推進するには、まずはレガシーシステムの刷新から着手すべきだという方向性を示しているとも言える。
第2部では、DXレポートで指摘された「2025年の崖」、およびDX推進ガイドラインの内容について紹介する。
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