シスコシステムズ 大野 元嗣氏によるコラム第四回「サービス業の働き方改革」

本連載では、全国の企業の皆様がICTを有効活用して、業務課題の解決や生産性の向上を通じて残業時間の短縮を図り、ワークライフ バランスを実現して働き方を変えるためのヒントをお話ししていこうと思います。
我が社はICTを使いこなせていないが何故だろう、といった疑問を感じている経営者や現場の生産性の向上や収益拡大の一助につながれば幸いです。
筆者は、シスコシステムズで「ICTによる地方創生」と「リテール、ホテル向けICTビジネス開発」を担当し、地方の中小企業の経営者の方と会話をする中で、最も人手不足の課題が高い「サービス現場の働き方とICTの活用方法」に注目して話を進めていきたいと思います。


サービス業の働き方改革

超高齢化社会による労働生産人口の減少課題から、人手不足に対応する為の長時間労働を強いられては、若者世代への負荷が益々増大していく一方である為「働き方改革」による長時間労働の是正の対策が始まっています。また、移動時間を有効活用するためのテレワークや在宅勤務、サテライト オフィスの活用なども提言され始めています。

しかし、これらの対策については、「プレミアム・フライデー」に代表されるように、少々違和感がある方も多いのではないでしょうか?私個人は仕事にメリハリをつけて短時間集中し、仕事の処理能力を上げるという意味で大賛成ですが、生産性をあげる為の抜本的な対策のシナリオが無いままでは片手落ちではないか?というのが一般論となります。

最大の課題は、この対策の中に「サービス業」が入っていないことにあります。プレミアム・フライデーで仕事終りのサラリーマンが行く先は、飲食店やショッピングなどであり、その業界の従業員は仕事を終えることができません。このキャンペーンは売り上げが増えるからという玉虫色のメリットを狙ったと読み取れますが「サービス業側」からすると、人手を増やす必要もあり「働き方改革」の取り組みとしては少々腹落ちできないキャンペーンとなりました。

今回は、この飲食店や小売業などのサービス業の現場での生産性向上による人手不足対策を考えた「サービス業の働き方改革」にどうやって取り組んでいくかについてアイデア出しをしたいと思います。

日本のサービス業の生産性は、公益財団法人日本生産性本部の「日米産業別労働生産性水準比較」によると、アメリカを100 とした場合、運輸業では44.3、卸売/小売業では38.4、飲食/宿泊業では34.0 とアメリカに比べて圧倒的に日本の方が低いとされており、事実「人手不足や後継不足による倒産」も増え続けて「働き方改革」が急務となっています。また、サービス業は日本の各地に幅広く存在しており、小売/飲食/運輸業など幅広いエリアで、生産性を向上する必要があります。それができれば、その改善効果はとても大きいと考えています。

まず、根本的に現場での取引となるため、現場にいかなければならないのがこの業種です。
これらの現場では、シフト対応による時間管理により働きたい時間に働けるというとても働く女性活躍の場としても魅力ある仕事と考えられます。ベテランの経験によるおもてなし接客も重要で、高齢となっても働ける場所であるとも期待されています。しかし実際には、働く現場では接客に至るまでの仕事が多く存在しており、調理等は別としても、電話/メール/計算/報告書/経費清算/受発注/発送/在庫管理検索/予約確認/クレーム対応等々の様々な仕事があるのも事実です。

加えて、この現場ではIT を駆使して業務効率を高めようとする試みはあまり進んでおらず、IT システムの導入や仕事の進め方、サービス体制の見直しといった働き方改革によって業務スピードを高められる余地がまだ残されています。でも、どう取り組めば活用が勧められるかもわからないのがこの業界です。

まず、第一回で述べたように、人手不足の中限られた人材を活用するには、それぞれの業務タスクを細かく分解し、顧客サービスの価値のある業務とない業務を明確にした上で、役割分担の見直しやマルチタスク化を推進し、生産性の高い働き方を実現していくことができると考えます。
(1) 業務タスクを細かく分解し、サービスの価値を生み出さない業務を捨てる
(2) IT活用やロボットによって代替できるものは極力無人化し、効率性を高める
(3) 業務タスク内で同じ物が点在し業務量が多い場合は、まとめて1タスクとする
(4) ベテラン スタッフは、接客する時間を長く取りつつマルチタスク化する
(5) 在宅スタッフとリアルタイム コミュニケーション システムをフル活用する
(6) あらかじめ集客が見込まれない日には休業日にする

業務タスクを再構築することで、労働時間は短縮されると共に時間密度を高めることができます。

現場のスキルに合わせて再配置を試行していくと、現場はより多能な人材を求められ、新たなミスやそのリカバリーで仕事が増えてくるという逆のケースもありうるため、(1)-(4)を定期的に実行し調整していくことも重要なポイントとなります。

また、(2) 個店のレジは無料から始められるクラウドPOSを活用しない手はありませんし、会計クラウドの利用も再入力の手間が減るため、事務仕事を大幅に減らすことができます。
接客ロボット/調理ロボットや自動発券機や精算機を導入するのも対策の一つですが、少々味気ない接客になってしまうことに配慮が必要と考えます。

(5)は、現場の従業員に定期的に在宅勤務していただくイメージとなります。昨年イオンSCで「在宅店長」の試みもあり、在宅の際は店舗の部下が店長代理をし、在宅店長は販売契約書/報告書の作成/メール対応など事務関係の業務を中心に行うという取り組みがされています。しかし、そこにはリアルタイム コミュニケーション システムが重要な役割となると考えます。現場は、スマホの登場やアップル ウォッチ等のウェアラブル端末によって、本部スタッフや在宅スタッフとの連絡が取りやすくなりました。現場スタッフのチーム内に在宅スタッフを配置できれば、接客以外の仕事をまとめて支援してもらうこともできますし、接客時に手が回らない時でも、リモートから緊急ヘルプしてもらうことも可能となります。店内の状況なども、ビデオ会議用デバイスでの空間共有やセキュアなビジネス版チャット ツールがあれば、双方に安心してスムーズなコミュニケーションが可能となります。

仕事、育児、介護の「1人3役」を求められている現代の勤労世代をどう支えるか、現場で働く従業員の家庭生活も視野に入れて、働き方改革にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

次回は最終回「チーム協同作業による未来の働き方」について提言をします。

 

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