シスコシステムズ 大野 元嗣氏によるコラム第三回「テレワークが長続きしない本当の理由」

本連載では、全国の企業の皆様がICTを有効活用して、業務課題の解決や生産性の向上を通じて残業時間の短縮を図り、ワークライフ バランスを実現して働き方を変えるためのヒントをお話ししていこうと思います。
我が社はICTを使いこなせていないが何故だろう、といった疑問を感じている経営者や現場の生産性の向上や収益拡大の一助につながれば幸いです。
筆者は、シスコシステムズで「ICTによる地方創生」と「リテール、ホテル向けICTビジネス開発」を担当し、地方の中小企業の経営者の方と会話をする中で、最も人手不足の課題が高い「サービス現場の働き方とICTの活用方法」に注目して話を進めていきたいと思います。


=テレワークが長続きしない本当の理由=
日本の超高齢化社会が明白となった現在、これまでの企業活動を継続保持するためには生産性をより向上させて、残業時間を是正し、子育てをしながらも女性の離職を減らすべく、より働き易い環境を作る「働き方改革」というテーマでその対策が進んでいます。
特に首都圏の通勤問題は実感として解決が見えて来ませんが、移動時間を有効活用するためのテレワーク(リモートワーク、在宅勤務)については、日本テレワーク協会等の活動効果もあり、サテライト オフィスの事業者も増え始め、ブームの兆しが見えてきました。しかし、企業側ではテレワーク制度を始めても、すぐに従来の働き方に戻ってしまう「テレワークが長続きしない」状況に陥ってしまうというお話をよく耳にします。今回はその理由について深堀してみたいと思います。

企業が「働き方改革」の流れに乗り、急に「在宅勤務をしてください」と言われても、家族と朝ごはんを食べて元気に「いってきます!」という生活リズムを急には変えられないのが実情かと思います。テレワークの背景にはロンドン オリンピックの際に外国人観光客の増加に合わせて、通勤時に重層ラッシュとなる事を予見し、テレワークで回避したという成功例から始まります。日本では東日本大震災の経験やインフルエンザの流行もあり、その必要性は実体験を元に認識されていますが、何もなければ会社で仕事をするのが当たり前という日本企業文化に染まっていると、いざ!があっても、行けないものは行けないし、業務が滞っても仕方がないな。と諦めるしかありません。しかし、それでは事業継続に影響が出てしまいます。
テレワークはセキュアなクラウド サービスやネットワークの進化で簡単に利用できる時代になりました。リモート アクセスやVDI環境、BYOD、MDM活用例も増えており、これまで以上に簡単に利用環境の構築が可能となってきています。
しかし、情報システム担当者にとってはいくつかの課題があります。
・部門別の利用方法が様々で、セキュリティの統一ポリシーが作りづらい
・外出先での物理セキュリティ対策や情報漏えい対策など検討範囲が多岐に渡る
・テレワーク環境の整備に対しての新規投資と既存システムの改善コスト
特にセキュリティに関しては、過去の例から見ても、人為ミスや紛失からの漏えい事故も多く、ICTだけでカバーしきれるものではありません。
従って、ICT環境については他社の具体例も参考にしつつ、クラウド サービスも上手に活用して、リモート アクセスの自由度とセキュリティを両立し、更に物理セキュリティに関わる運用ルールを明文化した上での導入を前提として考える必要があります。
しかも、いきなりの全社展開では最適化チューニングのタイミングが取りづらいため、まずは最も必要性のある部門から試行を開始し、無理の無い運用方法や利用状況を確認しながら、順次他部門に拡げていくという、現場の理解を得ながらも激変を緩和しつつ段階を踏んで導入を進めていくことをお勧めします。

テレワークを進めるにあたっては、第二回で取り上げた企業文化の課題もあります。上司は部下の様子を把握したい、部下は上司からの指示や決裁待ちをしている場合もあります。
実際の昔話ですが、テレワークでの会議の際に上司が皆の意見を順次に聞きながら、リモートから参加しているメンバーの意見を聞かなかったり、「次回は会社に集まるように」と発言したりすると部下は「私は評価されていないかもしれない」と不安になってしまい、結局会社へ向かってしまうという訳です。
つまり、マネージメント層がリアルに会議室にいる人もテレワーカーも平等に接することが必要となってきています。
こうした日々の振る舞いが、働き方改革では重要なポイントになってくることを理解した上で、意識して変革をしていかないと、テレワークが掛け声だけで定着していかなくなってしまうと考えています。

サテライト オフィスの提供側にも、少々の誤解が生じていると考えます。特に地方側で進めているサテライト事業については、海外事例にある「シェア オフィス」を参考にして、まずは地元のスタートアップ創生のための「コワーキング スペース」を提供される場合が殆どです。しかし、首都圏のサラリーマンが地方で一定期間働くことを想定した場合は、大企業社員に必要な「サテライト」の要件が「コワーキング スペース」の要件とは少々違っている事を認識する必要があります。
大企業がサテライト利用を進める際に要件とされることは、
・情報漏えい対策や入退室などの「物理セキュリティ」
・PCウイルスやマルウェア対策などの「ネットワーク セキュリティ」
・本社や仕入先とのリアルタイムコミュニケーションのための「セキュアな高速ネットワーク」と「企業間TV会議接続」
・携帯電話やWeb会議の音漏れ防止ブースや少人数用の会議室

他にも、複合機、ロッカー、快適な環境も重要となります。その大きな理由は、自社のオフィスと同等にセキュアで安心であり、より快適で働き易く、生産性が上がる環境でないと利用促進されないからです。
最近では、カフェでテレワークをしようとすると、雑音が集中しやすいという場合もありつつも、携帯電話やWeb会議をする場合には、情報漏えいやネットワークセキュリティの観点で適切な場所とは言えず、躊躇してしまうなど不便を感じてしまいます。また在宅勤務についても、特に子育て中の家庭では家事と仕事を自宅内で両立することが難しい場合もあります。使いたくなるサテライトとは「自社オフィスよりも安心で快適であること」です。

テレワークを浸透し継続させるためには、文化、人事評価制度の改革やマネージメント層の理解と共に、実際にテレワークをする自宅やサテライト オフィスの環境、自社オフィスや取引先と接続される高品質TV会議やセキュアな高速Wi-Fi環境も忘れずに考慮する必要があります。オフィス側、テレワーク双方の利用者に少しでも使いづらいと感じさせるものとなってしまっては、利用促進することができません。テレワークの必要要件を備えるサテライト環境があれば、リアルに会社にいると同様に安心してテレワークすることができ、社員ひとりひとりがチームの一員として場所や移動時間にとらわれず、チーム全体の生産性やスピード向上を目指した効率的で新しい働き方が可能となり、これまで以上の成果を出していけることと確信しています。

次回は、飲食店や小売業などサービス業の現場での「サービス業の働き方改革」について改めて考えてみたいと思います。

 

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