シスコシステムズ 大野 元嗣氏によるコラム第二回「ICTが支援できること、できないこと」

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本連載では、全国の企業の皆様がICTを有効活用して、業務課題の解決や生産性の向上を通じて残業時間の短縮を図り、ワークライフ バランスを実現し、働き方を変える為のヒントをお話ししていこうと思います。
日頃「我が社はICTを使いこなせていないが何故だろう?」といった疑問を感じている経営者や現場の参考となり、生産性の向上や収益拡大の一助につながれば幸いです。

筆者は25年以上にわたりIT業界でソリューション開発を担当してきました。現在はシスコシステムズで、「ICT地方創生」と「リテール、ホテル向けICTビジネス開発」を担当しています。仕事柄地方の中小企業の経営者の方と会話をする機会が多く、その実体験も踏まえて、今回は最も人手不足の課題が高いサービス現場の働き方とICTの活用方法に注目して話を進めていきたいと思います。

=働き方改革に際して、ICTが支援できること、できないこと=

日本の超高齢化社会が明白となった現在、これまでの経済活動を継続する為、人手不足による若手社員の残業の増加防止や、子育て中の女性の離職を減らすべく、日本政府が「働き方改革」というテーマで対策をはじめています。
残業対策についてはまだ時間的なルールを決めたに過ぎず、残業が減った分の生産量の低下の議論が始まったばかりですが、業種別それぞれの仕事形態もあり企業自身が考えて実行することとしてその対策は委ねられています。企業側は、情報システム部に対して更なる生産性を向上すべくICTによる業務効率化を要求されますが、取れる手段は老朽更新によるコスト削減か、ユーザーインターフェイス手直しやレスポンス改善等、表面的な対応に留まっていることと思います。
逆に、急激な変化にさらされた事業部門はデジタル(AI,IoT等)の活用による意思決定のスピードアップを要求され始めていますが、従来型システムではスピードが合わず、シャドーITと呼ばれる現場でのクラウド サービスを活用する動きが増えることになります。こちらは一見部門予算で手軽に導入できますが、いざ社内の基幹システムとのデータ連携をしようとすると情報システム側の理解を得られず、根本的な解決ができないことに立ち戻ってしまいます。
第一回で述べたように、その業務プロセスそのものが「無駄」な場合もあります。例えば既存の承認プロセスをワークフロー システムで表現しようとする場合がありますが、承認プロセス自体が日本の判子文化をシステム化されたまま出来ており、実は上司への電話一本の確認で済むことだったりします。先日、中小企業の経営者との会談で、残業して遅くにメールで送ってくる長い報告書は悪い報告しかないが、電話してくるのはいい報告ばかりとお聞きしました。経営者からすれば話すことで状況はすぐに把握できるし、本当に欲しい報告は言い訳ではなく、悪くなる前に相談して欲しいということです。しかしこれまでの業務プロセスを正とするばかりに、カスタマイズ可能なサービスを選ぶなど、結果的に拡張性や柔軟性が失われ、継続して使えず使われないシステムになりがちです。
従って、第一フェーズではペーパーレス対策などのアナログ的業務の削減や、プロセスの見直しを実施し(BPR)、汎用的な業務プロセスになっているクラウドに合わせるくらいが丁度いいでしょう、むしろ経費清算や名刺管理はクラウド活用のメリットが多いですね。

汎用的なクラウドICTは、特殊だと思い込んでいた自社業務の無駄な部分を気づかせてくれる役割もあるかもしれません。情報システム部はクラウド利用時の注意点を明確にした上で事業部門とよく話し合い、業務プロセスの見直しや基幹システムとのデータ連携を盛り込んで利用促進させることが、最新のICTが支援できることだと考えます。
ここまで読んでお分かりのように、ICTは生産性を向上させる為の一手段に過ぎず、導入すれば単純に生産性が上がる訳では無くかえって報告や伝達の為に現場社員の入力作業が増えて生産性を下げる事にもなりかねません。その入力作業は上司がその上司に報告する為の作業だったりしませんか?膨大な入力に追われている部下がいれば、直接声をかける、電話することに置き換えてみてはいかがでしょうか?社内コミュニケーションをしっかりととることに意識を置き、働く時間や場所、業務プロセスをうまく変化させて生産性を上げていくのも重要です。

もう一方、働き方改革で根本的にICTでは支援できないことが2つあります。
ひとつは、企業文化です。体育会系と呼ばれるような企業文化ですと上司の指示が全てだったり、気合いを入れ本気で取り組めばできると言われたりします。文化は脈々と口頭伝承で続いているのでなかなか変えられません。日本企業は出世がしたいなら忠誠心が重要で、年功序列と終身雇用を元にした思考回路となってしまっていて、文化を変えられない最大の課題と言われています。このような文化では、自由な発想でイノベーションを起こしていくのは程遠く、大手企業でも日常業務中ではイノベーションは生まれにくく、若手コミュニティやグループ企業分科会などから発想されたものが多いと言われています。

もうひとつは人事評価制度です。時間管理によって給料を得ている現在の雇用形態では、高度成長期に合わせたプロセス業務を時間内で高速に繰り返していれば良かったのですが、グローバル競争時代において(オフィス ワーカーが)時間管理で守られているという国は少なく、時間管理ではどうやって業務時間を薄く過ごすかというマインドになっていくのも無理はありません。働く場所や時間などを少々柔軟にすると、サボっているのではないかと疑われたりするのは、この大きな弊害です。実際に働いて得た成果を元に評価される、評価制度が求められています。
柔軟な思考が出来る管理職は残念ながら非常に稀で、目の前に部下がいる前提でのマネジメント方法しか教えられていないので、目の前にいないテレワークの部下をどう評価したら良いかわからずパニックに陥ります(第三回へ)。定年まであと数年なのに、いきなり成果を求められると、30年以上も休まず通勤し残業もしてきたじゃないか!という栄光(?)に浸りたくもなります。しかも多くの会社の舵を握っている層が成果型マネジメントを理解しづらい世代であることもあり、事態はかなり深刻です。
成果主義を軸にした企業文化や人事評価制度に変わっていくためには、シニア社員は社会人1年目から出直すくらいの覚悟が必要でしょう。若手とシニアがお互いを認め、能力を競い合って企画案を作り上げ、チーム一丸となってお互いにできることを補完し合いながら、大きなプロジェクトを完成していく、そんな仕事がやり甲斐のある新しい働き方となっていけるものだと思います。

次回は、働き方改革で在宅やリモート ワークをしようとしても、すぐに前の働き方に戻ってしまう「テレワークが長続きしない本当の理由」について深堀りしてみます。

 

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